アウトドアの歴史に名を刻む帆布の老舗
その知恵と技を活かした暮らしの道具
東京都中央区日本橋堀留町。この一帯は江戸時代から続く古い問屋街である。その通りから、活気あるミシンの音が聞こえてくる。帆布製品の製造・加工で国内外から高い評価を得る細野商店の工房からだ。カラフルな帆布のバッグが目を引く店内をのぞくと、その奥には工房があり、訪れた客が、帆布製品の製造過程を見学できるようになっている。
防水帆布で世界の山へ
細野商店が誕生したのは、大正元年(1912)。東京の神田で「細野防水布店」として創業した。当初は、人力車の幌や車夫の雨合羽などの帆布製品を製造販売する店だった。
やがてその帆布をもとに、昭和11年(1936)に日本最初の海外登山隊、ヒマラヤのナンダ・コート遠征隊の装備品を作ることになった。それがきっかけとなり、「テントの細野」「帆布の細野」としての歴史が始まった。そしてエベレスト、マナスル、アラスカ、南極など世界の名だたる名峰や極地でその足跡を残してきたのだ。
過酷な条件の中で使用される帆布製品の製造から培った技術は、現在、一般のユーザーがデイリーに使うバッグやリュックサックなどの製作に活かされている。
特に近年は、天然素材独特の質感や色合いが、ナチュラル志向の女性たちからも支持され、帆布のよさが改めて見直されている。
天然素材の強みを活かす
細野商店のバッグの多くは、船やトラックの幌などに使われる「9号」という厚手の帆布を採用している。最近は機能性に優れた化学素材もたくさん出ているが、天然素材の強みは、長く使い込んでも基本的な特性がほとんど変化しないということだ。多少の傷や汚れがついても、それがむしろ「味わい」という魅力にもなる。それゆえ、細野商店には長年使い込んだ愛着のある製品の修理を依頼する人が絶えないという。
今回は、細野商店の人気アイテムであるトートバッグから『佳人手帳』の読者のために特別に2アイテムをオーダーした。
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細野商店の外観。問屋街の中で、白い壁とガラス張りの入り口がひときわ目を引く。
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色とりどりの質実剛健な帆布製品がディスプレイされた店内。奥に工房がある。
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細野商店3代目・細野昌昭さん。4代目の息子・慎治さんとともに、今もミシンに向かう。
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タグにある山は日本が世界初登頂を果たしたマナスル。その装備を製造したのも細野商店だ。
お買い物やアウトドアに、
ハードに使える帆布のトート
今回オーダーしたのは、大小2種の使いやすいトートバッグ。
大容量ショッピングトートは、まとめ買いに重宝する。ほかではなかなか見つからないビッグサイズで、外側には本体と同色のポケットを付けてもらった。
小さいトートは、本体とポケットのおしゃれなバイカラーが特徴。手提げでもショルダーでも使え、ハンドバッグ代わりに気軽に愛用していただける。こちらは表側のポケットにマチが付き、内側にも便利なポケットを備えている。
帆布にパラフィンを浸み込ませ、さらに表面に撥水コーティングを施した。自立するので、ものの出し入れがしやすく、ちょっと床置きするときも安心。
大きなほうは3色展開。2ℓのペットボトルを4本入れてもまだ余裕。大きさの割に軽い仕上がりになっている。
小トートは2色展開。内側にファスナーポケットが付き、ちょっとしたお出かけにも便利。収納力もたっぷりある。