「深川硝子工芸」は、1906年に東京・深川で創業した老舗ガラスメーカー。多くの江戸切子工房が軒を連ねた東京を離れ、遠く北の港町・小樽に移転したのが2003年のことだ。そんな同社は、職人にガラス生地を卸すメーカーからの進化を志す。5代目・出口新一郎氏の息子、出口健太氏が目指したのは新たな「小樽切子」の確立。もうひとりのキーマンである切子職人・沼田たまえ氏は江戸切子の伝統工芸士のもとで修業を積み、出口氏とともに、2015年に小樽切子をスタートさせた。
小樽切子はガラス生地メーカーとしての強みを活かし、2色被せのクリスタルガラスを多用。アンバーカラーに色ガラスを重ね、独特の深みのある表現を生み出した。
代表作「オールド雅」は左右非対称デザインと、ドラマチックで大胆なカットが魅力。新作の「タンブラー漁火」は、暗い海の水平線に灯る漁火を表現。グラスを眺めて酒を注ぎ、それを覗き込んで杯をあおる。酒の減ったグラスに、夕日が透過してテーブルに豪奢な光の紋様を映し出す。このグラスとのワンシーンすべてが美しい、北の国の新しい切子である。
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まるで炎が渦を巻いているかのようなカットを見せる「タンブラー漁火」の底面。グラスを覗き込むのが楽しみになる。
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「オールド雅」の底には左右非対称な彫刻が施される。力強く大胆なカットは、小樽切子の特徴のひとつである。
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深川硝子工芸1906年、東京・深川に創業したガラスメーカー。2003年に北海道小樽市に移転後も江戸切子職人から熱烈な支持を受ける。2015年にオリジナルの小樽切子をスタートさせた。