石膏型から取り出した後の削り出しの作業。こうすることで多孔質な生地の表面積が増え、蓄熱性が高まる。こうした機能に関わる重要な作業はひとつずつ職人の手で行なわれている。
国の伝統的工芸品の指定も受ける伊賀焼は三重県伊賀市を中心に作られる陶器で、鎌倉時代に生産が本格的になったと言われる。伊賀焼は耐火性、蓄熱性に優れていることが一番の特徴だが、その秘密は陶土にある。伊賀の陶土には400万年前に生息していた生物の遺骸が含まれており、高温で焼成すると、この遺骸部分が燃え尽きて細かな気孔ができ、多孔質な生地となるため“呼吸する土”とも言われ、熱を蓄えるため、遠赤外線効果が高く食材の芯までじっくり熱を伝えることができるのだ。
こういった特徴を活かし、天保3年(1832)に創業し、土鍋などを作り続けてきたのが、伊賀焼窯元・長谷園である。同社社長の長谷康弘さんは言う。
「台所だけでなく、食卓でも使える調理器具を作るというのが長谷園のコンセプトです。食卓で煮物や蒸し物が楽しめる土鍋を作ってきましたが、今度は焼き物を楽しめるものが作りたいと思って」
今回掲載している「陶板黒らく」は、直火、レンジなど広く対応し使い勝手がよくおすすめ。伊賀の土の特性と技術が詰まった陶器でよりいっそう楽しいおうち時間を過ごしていただきたい。