ベッドに入ったときのひんやり感とはもうさよなら。オーストラリア産の良質なメリノウールを使用した、毛足の長い敷きパッドとブランケットがあれば、床に入った瞬間からぬくぬくだ。
ウールの繊維にはスケールと呼ばれる鱗状の構造がある。それが環境の変化に応じて開いたり閉じたりすることで温度や湿度を調節する。素材自体が生きて呼吸をしているように働くのだ。だから暖かいのはもちろん、蒸れたり暑すぎたりすることもなく、理想的な睡眠環境を作ってくれる。そのウールの特性を存分に活かした、ふかふかのボリューム感があるこちらの寝具は、老舗メーカー・西川による逸品。ウールなのに家庭で洗濯できるのもポイントだ。
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今回ご紹介するロングパイルウールの寝具は、大阪府泉大津市にある毛布専門の工場で作られている。ここでは「カールマイヤー」という特殊な編み機が使われている。つまり、 この生地は〝織り物〟ではなく〝編み物〟なのである。特徴は、2枚の基布を編みながら同時にその間をパイル糸でつないでいく編み方にある。編み上がった2層の基布をつなぐパイル糸を真ん中でカットすると基布は1枚ずつに分かれ、パイル糸が毛足となって現れる。
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製品を編むカールマイヤー機。毛足の長い毛布にはこの編み機が必要になる。毛足の長さも自由に設定できる。
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その後、毛足のない基布の裏側にも起毛を施す工程を加えて、両面にパイルがある状態にしている。
基布の地糸にはあえてポリエステルを使う。強度があり、加熱によって収縮するポリエステルの性質を活かして、ウールのパイル糸を抜けにくくしているのだ。
工程はまだまだあるが、仕上げの段階で重要なのが「毛捌き」である。繊維をほぐしてふわふわの風合いを出す作業だ。機械で行なうが、その調整には職人の目と技が不可欠となる。さらに製造過程で防縮加工を施し、 「ウールなのに家庭で洗える」という大きな特徴を実現した。
寒い冬の眠りを、至福の時間に変える寝具には、こんなさまざまな技が詰まっているのだ。
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2枚の基布の間にパイル糸を交差させる「編み立て」の工程。コンピューターで制御されたセットを職人がチェックする。
毛布の洗浄・乾燥後、櫛状になったローラーで繊維をほぐして風合いを出す「毛捌き」 。職人の目と技が重要となる。
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ウールと綿の、吸湿量の推移を比較した実験結果。ウールは綿と比較しても吸湿機能が高く、汗による冷えを防いで、長い時間快適な状態を保ってくれる。