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写真=28cm打出し製法ならではの表面の微妙な風合いが味わい深い。ハンドルには熱を伝えにくいチタンを採用し、持ち手が過熱するのを防ぐ。
左上から時計回りに、28cm、24cm、26cmサイズは3種類。家族の人数や作る料理に合わせて使い分けられる。今お使いのフライパンのサイズを目安に選ぶとよい。
ハンドルには山田工業所謹製であることを示す「打出し」の刻印が。これも手作業でひとつひとつ付けられる。
型抜きした鉄板をハンマーで打ち出していく。その回数およそ5000回。職人の技が冴さえる。
山田工業所
24cm
-
26cm
28cm
鉄板を何千回も叩いて形作る 職人の手技が冴える鍋
「家庭料理なら一生モノどころか孫の代まで使えます。鉄の鍋は直火で使っていくうちに外側に炭素が付いて火の通りがまろやかになります。また油がなじめば焦げにくくなっていきます」
中華料理の名店が軒を並べる横浜・中華街。その店の多くで愛されているのが山田工業所の中華鍋である。中華街からほど近い福浦にある小さな製造元を訪ねた。
型抜きした鉄板をハンマーで打出していく。その数およそ5000回。職人の技が冴える。
創業は昭和32年だが「その前から中華鍋を作っていました」と語るのは、同社2代目社長の山田豊明さん。「戦後すぐで、とにかく料理道具がなかった時代。親父がドラム缶をハンマーで叩たたいて鍋を作ったのが始まりです」 ここの鉄鍋作りを特徴づけるのは一枚の鉄板を何度も叩いて成形する打出し製法。金型で一気に成形するプレス方式が一般化するなか、打出しで鉄鍋を作っているのは全国でもここだけである。その特徴は軽いこと。一般的なプレス式の鍋と持ち比べればその差は歴然だ。「うちの鍋は鉄の板を何千回も叩いて成形します。その過程で鉄から不純物が叩き出されて軽くなるんです」鍛えられることで強度も増す。厚みの変化もつけられる。「たとえば火の当たる底の部分は薄く作ります。熱伝導もよくなり素材に火が通りやすくなります」これほど優れた打出し製法の鍋、なぜ他では作っていないのだろう。「手がかかりますからね。うちでは機械もすべて自前ですし、長年の経験もあります。他ではちょっと真似できないでしょう」と山田社長は胸を張る。
「鉄の鍋は使い続けるうちにどんどん良くなります」と語る社長の山田豊明さん。
打ち上げた中華鍋を手に説明する山田憲治さん。鍋底の薄さや丸みも微妙に変化をつける。
底が平らでヘリの立ち上がりが急なフライパン作りは中華鍋とは異なる技術を要する。カンカンとリズミカルな金属音が響く工場内では、熟練の職人たちが黙々と作業を進めている。手作業でも寸分たがわぬ鍋が打ち出され、積み上げられていく。