BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第8回)『七年目の浮気』 ――ジンの飲み方、普通はどうするの?
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2014/9/30

第8回:七年目の浮気
――ジンの飲み方、普通はどうするの?
BAR CINEMAへようこそ。
このバーでは、皆さまの記憶に残る映画の名シーンを彩った素敵なお酒を、映画の時代背景、お酒の由緒・成り立ちと合わせてご紹介し、ご賞味いただきます。
バーでの1杯目にふさわしいカクテル、ジントニック。当店でのレシピは氷を入れたグラスにジン30ml、フレッシュライムを軽く搾り、トニックウォーターを適量、さらに少しソーダを加えて仕上げます。写真のジンは、最近人気になっているスコットランド・アイラ島産のジン「ザ・ボタニスト」。オレンジやレモンなどのシトラス系の香りが印象的なジンです。
リチャード:There’s gin and tonic, and gin and vermouth, that’s a martini.
モンロー:That sounds cool. I’ll have a glass of that. A big, tall one.
当コラム第5回でご紹介しました「お熱いのがお好き」(同「アパートの鍵貸します」)に続き、私の大好きなビリー・ワイルダー監督の作品(1955年公開)です。
マリリン・モンローの白いスカートが、地下鉄の通気口から吹き出た風でふわりとまくれる、あのシーンは誰もが知っているはず。そして、この有名なコメディ作品でもお酒が気の利いた小道具として使われています。
ニューヨーク・マンハッタンに住むリチャード・シャーマン(トム・イーウェル)は、出版社に勤める中年のサラリーマン。妻とひとり息子が夏休みのバカンスに出掛け、しばしひとりの生活を謳歌することになったその晩、自分の住むアパートメントにブロンド美人(マリリン・モンロー)が登場(役名がないので、便宜上、以降はモンローとします)。自分の部屋の真上の階を夏の間だけ間借りしているという。
夜、リチャードがテラスで原稿を読んでいると、いきなり上からトマトの鉢が落下! 謝るモンローに対して、リチャードは「こちらで一杯どう?」と彼女を家に招く。
真面目だが想像力豊かな彼は、彼女が来るのを待つ間、自分の浮気心をとがめながらも、これからの成り行きについて妄想を馳せる。それはもう邪念の塊であった(笑い)。
モンローが自宅に招き入れ、お酒をすすめるリチャード。ここでのやり取りが、モンローの無邪気なかわいらしさを強調していて、素敵です。
リチャード:好みは何? 飲めるんだろ?
モンロー:もうザル並み(I drink like fish)。ジンある?
リチャード:ストレートで?
モンロー:ソーダで割って。
リチャード:ソーダ割り?
モンロー:おかしい? 普通はどうするの?
リチャード:ジントニックだが切れているし、ベルモットでマティーニを。
モンロー:ステキ。大きいグラスでね。
リチャード:マティーニの大盛り。
ここで登場する「ジントニック」について、まずご説明しましょう。
ジントニックは「gin and tonic」の名のとおり、ジンにトニックウォーターを加えて混ぜたものです。しかし、作り方はバーによっていろいろ、実に奥が深いカクテルです。
ベースになるジンは何を使うか?
たとえば、タンカレーを使用すると、4回蒸留の仕上がりからくるドライでスッキリとした味わいになります。
ボンベイサファイアを使うと、シトラス系のさわやかな香りが広がります。
トニックウォーターにただのソーダを加えると、味わいがドライになります。トニックウォーターには甘みがあるので、ソーダでその甘みを抑えるのです。日本ではこうして作られたものを「ジンソニック」と呼んだりします。英語圏では「プレススタイル」と言います。
ライム果汁はあらかじめ搾り置いたものを使うのか、その場でカットライムを搾るのか、搾り終えたカットライムをグラスに入れるのか……。
もう、レシピは書ききれないくらいあります。
これはあくまで私個人の見解ですが、ジントニックにさわやかなジンを使い、軽めに仕上げるバーは、ほかのカクテルも優しくさわやか。反対にジンが濃いめに作るバーは、ベースがしっかり効いたカクテルに仕上げる、という傾向があります。
バーテンダーがほかのバーにお邪魔する時に、ジントニックを注文することが多いのは、ジントニックにはそのバーの〝カラー〟というか、傾向が表れるからだと思います。
話を「七年目の浮気」に戻しましょう。
先述の会話では、ジンのソーダ割りはおかしい、ということになっています。確かにバーで「ジンソーダ」は召し上がる方は少ないですが、「ジンリッキー」というカクテルなら、飲んだことのある方も多いと思います。
ジンソーダにライムを搾るとジンリッキーとなるのですが、個人的にはジンリッキーと「ジンソーダライム搾り」では、ライムの搾り方が違ってくると思っています。
ジンリッキーの場合はライムジュースをしっかり搾ります。当店では1個の3分の1カットを使用します。それを先に搾り落としてから氷とジンを入れ、しっかりと材料を一体化させ、ソーダを加えます。
一方、ジンソーダは氷、ジン、ソーダを入れ、最後にライム6分1カットを軽く搾ります。つまり、ライムのフレーバーをつけるというイメージです。
私にとって、この二つカクテルは似て非なるものなのです。
このバーでは、皆さまの記憶に残る映画の名シーンを彩った素敵なお酒を、映画の時代背景、お酒の由緒・成り立ちと合わせてご紹介し、ご賞味いただきます。
バーでの1杯目にふさわしいカクテル、ジントニック。当店でのレシピは氷を入れたグラスにジン30ml、フレッシュライムを軽く搾り、トニックウォーターを適量、さらに少しソーダを加えて仕上げます。写真のジンは、最近人気になっているスコットランド・アイラ島産のジン「ザ・ボタニスト」。オレンジやレモンなどのシトラス系の香りが印象的なジンです。
リチャード:There’s gin and tonic, and gin and vermouth, that’s a martini.
モンロー:That sounds cool. I’ll have a glass of that. A big, tall one.
当コラム第5回でご紹介しました「お熱いのがお好き」(同「アパートの鍵貸します」)に続き、私の大好きなビリー・ワイルダー監督の作品(1955年公開)です。
マリリン・モンローの白いスカートが、地下鉄の通気口から吹き出た風でふわりとまくれる、あのシーンは誰もが知っているはず。そして、この有名なコメディ作品でもお酒が気の利いた小道具として使われています。
ニューヨーク・マンハッタンに住むリチャード・シャーマン(トム・イーウェル)は、出版社に勤める中年のサラリーマン。妻とひとり息子が夏休みのバカンスに出掛け、しばしひとりの生活を謳歌することになったその晩、自分の住むアパートメントにブロンド美人(マリリン・モンロー)が登場(役名がないので、便宜上、以降はモンローとします)。自分の部屋の真上の階を夏の間だけ間借りしているという。
夜、リチャードがテラスで原稿を読んでいると、いきなり上からトマトの鉢が落下! 謝るモンローに対して、リチャードは「こちらで一杯どう?」と彼女を家に招く。
真面目だが想像力豊かな彼は、彼女が来るのを待つ間、自分の浮気心をとがめながらも、これからの成り行きについて妄想を馳せる。それはもう邪念の塊であった(笑い)。
モンローが自宅に招き入れ、お酒をすすめるリチャード。ここでのやり取りが、モンローの無邪気なかわいらしさを強調していて、素敵です。
リチャード:好みは何? 飲めるんだろ?
モンロー:もうザル並み(I drink like fish)。ジンある?
リチャード:ストレートで?
モンロー:ソーダで割って。
リチャード:ソーダ割り?
モンロー:おかしい? 普通はどうするの?
リチャード:ジントニックだが切れているし、ベルモットでマティーニを。
モンロー:ステキ。大きいグラスでね。
リチャード:マティーニの大盛り。
ここで登場する「ジントニック」について、まずご説明しましょう。
ジントニックは「gin and tonic」の名のとおり、ジンにトニックウォーターを加えて混ぜたものです。しかし、作り方はバーによっていろいろ、実に奥が深いカクテルです。
ベースになるジンは何を使うか?
たとえば、タンカレーを使用すると、4回蒸留の仕上がりからくるドライでスッキリとした味わいになります。
ボンベイサファイアを使うと、シトラス系のさわやかな香りが広がります。
トニックウォーターにただのソーダを加えると、味わいがドライになります。トニックウォーターには甘みがあるので、ソーダでその甘みを抑えるのです。日本ではこうして作られたものを「ジンソニック」と呼んだりします。英語圏では「プレススタイル」と言います。
ライム果汁はあらかじめ搾り置いたものを使うのか、その場でカットライムを搾るのか、搾り終えたカットライムをグラスに入れるのか……。
もう、レシピは書ききれないくらいあります。
これはあくまで私個人の見解ですが、ジントニックにさわやかなジンを使い、軽めに仕上げるバーは、ほかのカクテルも優しくさわやか。反対にジンが濃いめに作るバーは、ベースがしっかり効いたカクテルに仕上げる、という傾向があります。
バーテンダーがほかのバーにお邪魔する時に、ジントニックを注文することが多いのは、ジントニックにはそのバーの〝カラー〟というか、傾向が表れるからだと思います。
話を「七年目の浮気」に戻しましょう。
先述の会話では、ジンのソーダ割りはおかしい、ということになっています。確かにバーで「ジンソーダ」は召し上がる方は少ないですが、「ジンリッキー」というカクテルなら、飲んだことのある方も多いと思います。
ジンソーダにライムを搾るとジンリッキーとなるのですが、個人的にはジンリッキーと「ジンソーダライム搾り」では、ライムの搾り方が違ってくると思っています。
ジンリッキーの場合はライムジュースをしっかり搾ります。当店では1個の3分の1カットを使用します。それを先に搾り落としてから氷とジンを入れ、しっかりと材料を一体化させ、ソーダを加えます。
一方、ジンソーダは氷、ジン、ソーダを入れ、最後にライム6分1カットを軽く搾ります。つまり、ライムのフレーバーをつけるというイメージです。
私にとって、この二つカクテルは似て非なるものなのです。
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通常、マティーニに使うのは写真右側のカクテルグラスです。映画の「マティーニ大盛り」は左側のグラス以上に大きなタンブラーを使っていました! 1杯飲むとほとんどの人が昇天しちゃいそうです(笑い)。
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ウイスキーにレモン果汁と砂糖を加えて作るウイスキーサワー。いろいろなウイスキーで作られますが、当店ではブレンデッドウイスキーをベースにします。レモンとチェリーをあしらいますが、これは飾り。もちろん、食べていただいてもかまいません。
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レモンスカッシュは、レモン2分の1個を搾り、シュガーシロップを2~3さじ入れてかき混ぜ、適量のソーダを加えたもの。ソーダを水に替えるとレモネードになります。レモネードに赤ワインを適量注いで浮かべると、アメリカンレモネードというカクテルになります。