山形県 米沢市「カベ糸ストール」
カテゴリ | メイドインニッポン紀行
2015/3/10

特産品開発の奨励など、さまざまな知恵で藩財政を再建。名君と評された上杉鷹山の遺徳は、今も米沢の地に受け継がれている。
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かげろうの羽のように薄く軽い絹織物
米沢 ギシャ織りカベ糸ストール
「世界中の紳士淑女の首を私のストールで包みたい」
絹織物は上杉鷹山公の殖産政策によって花開いた地場産業だ。その米沢で"織りの重鎮"と呼ばれる職人が、高橋明義さん(86歳)である。
4代前までは上杉家の下級武士だった。城下の外れに居を構え、田畑を耕し、養蚕や機織りをしながら街道防備にあたった半農半士の家だ。
高橋さんが、先祖の残した茅ぶき家屋を改造し、機械織機を1台、また1台と増やしたのは戦後。時代の要請に応え、呉服生地から洋服生地までさまざまな絹織物を手がけてきたが、最も得意とするのは極薄の生地である。
「きっかけはアメリカ向けのスカーフです。昭和24年ごろでした。見本の柄は、従来の機械の設定では織れない難しい図案で、職人がみんな匙を投げました。最後に若造の私に話がきたわけですが、徹夜で機械を改造して織り上げてみせました。意地でしたね」
高橋さんの名を一躍有名にしたのは、カベ糸ストールである。カベ糸とは強い撚りをかけた芯糸に極細の糸をらせん状に絡み付けた糸のこと。透けて見えるほど薄く織っても、糸由来の質感から首に巻いたときに膨らみが出る。空気をよく含むので、軽快ながら暖かいのも特徴だ。 -
半世紀使い続けているアナログ織機。思い描いたとおりの織りになるよう調整するのが職人の腕。稼動中も動きから目を離さない。
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米沢の代表的技術は、染色した糸の織り重ねで色柄を表現していく「先染め」だ。
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ストールのような薄ものの生地は繊細。人と機械とが一心同体の状態にならなければ、きれいには織り上がらない。
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高橋明義さんと、明義さんも一目置く配色感覚を持つ奥さんの瑞枝さん。
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かげろうの羽のように透ける生地。超軽量ながら適度に張りがあり、皺になりにくい。
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2種類の織り方とグラデーションにより、巻きや重ねを変えるたびに輝きの微妙な変化が楽しめる。わずか20gと羽根のように軽い。
