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髙橋明義 米沢織ストール

カテゴリ | メイドインニッポン紀行

2015/3/13

髙橋明義 米沢織ストール

東北で発見した「ハイブランドも認める」世界一のシルクストール

 マフラーを巻くほどでもないけれど、朝夕はまだ首周りが少し寒い。そんな春先のファッションアイテムとして、薄く軽やかなシルクのストールが年齢や性別を超えて人気である。
 その代表的な産地が山形県米沢市だ。米沢といえば、大胆な行財政改革と殖産振興で破綻寸前の藩を立て直し、稀代の名君と呼ばれた上杉鷹山の領地。絹織物も鷹山公の起こした産業だ。明治以降は洋服地、スカーフ生地と多様化していくが、変わらないことがひとつだけあった。
 それは旧城下に紡糸、染色、織りなどの職人が居住し、地域一丸で製品を作り上げるという仕事の流儀だ。その協働の象徴が先染めである。原糸の段階で染色し、織りで色柄を表現する技法で、底艶のある色が魅力だが、職人どうしの気脈が通じていないとねらった色は出せない。
 ある織物問屋はこう語る。
「異なる領域の職人が顔を合わせて膝詰めで議論する。鷹山公時代のモノづくりの気風と環境は、今も生きています」
 米沢でストールが生産され始めたのは四半世紀前。当初はまったく売れなかったそうだが、やがて社会の風が変わり始めた。表面的な美しさから、本質を見据える時代に入ったのだ。頑固という言葉そのままの職人魂が生み出す織りの美には、今や海外の有名ブランドも一目置く。
  • 髙橋明義 米沢織ストール

    1枚の中に、なめらかな平織りと凹凸感のあるギシャ織りを同居させたオリジナルの生地。色柄も織りによって生み出す。

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    昭和のアナログ織機は構造がすべて頭に入っていないと修理も調整もできない。髙橋さんの改造をメーカーが新製品に反映したことも。

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    カベ糸ストールに使われる原糸。紡糸職人や染糸職人と直接話をして、設計の意図を説明できるのが米沢の強みだという。

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    経糸の間を秒速で往復するシャトルは底が摩耗する。偏って減ると軌道がぶれて織りに影響するため、ときどき均等に削り直す。

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    方眼紙に設計した色柄(写真)は板紙のパンチ穴に置き換えられる。板紙はオルゴールの回転盤と同じ原理で経糸の動きを制御する。

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    糸の結び目を切り詰めたり織り目を整える「検反」という作業。この後、整理屋と呼ばれる職人に糸の糊抜きと形態安定処理を委託する。

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    染め屋から届いた糸(経糸)を、デザイン設計に合わせて順に巻き替える整経作業。根気のいる下作業だ。途中で枠の突起が浮き上がると糸が絡んでしまうので、床に砂利を厚く敷き詰めて枠の突起を沈ませる。

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    夫唱婦随で絹織物に取り組み半世紀。色は主に奥さんの瑞枝さんが主導。夫妻のストールはMoMAのカタログの表紙を飾ったことも。

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    濃淡が変わる上側がギシャ織り。下側が平織り。2系統の色でアクセントをつけた。巻き方によって風合いの違いや色の変化が楽しめる。軽快な中にもカベ糸ならではの豊かな質感が。

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