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BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第10回)『グランド・ホテル』 ――「冷たくて甘い物」=玉子酒は男を強くする!?

カテゴリ | BAR CINEMA~この映画に乾杯!

2015/3/18

BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第10回)『グランド・ホテル』 ――「冷たくて甘い物」=玉子酒は男を強くする!?

第10回:グランド・ホテル
――「冷たくて甘い物」=玉子酒は男を強くする!?

BAR CINEMAへようこそ。

このバーでは、皆さまの記憶に残る映画の名シーンを彩った素敵なお酒を、映画の時代背景、お酒の由緒・成り立ちと合わせてご紹介し、ご賞味いただきます。

ブランデーと卵、砂糖で作るブランデー・フリップ。

クリングライン:I’ll have something sweet and cold, please.
バーテンダー:Louisiana Flip, sir?
クリングライン:Louisiana Flip? Yes! That sounds very nice. Thank you.

「ルイジアナ・フィリップっていうカクテル知ってる?」という、本コラム担当・細川からの電話に戸惑った私、亀島。
「フィリップは知りませんが、フリップというカクテルはありますよ」とこたえたところ、「そう、それ。フリップ! 『グランド・ホテル』という映画に出てくるので、DVDを送るから見ておいて」とのこと。
で、初めて見ました、1932年に作られた古い古いアメリカ映画『グランド・ホテル』を。

舞台はベルリンの最高級ホテル、グランド・ホテル。それぞれに問題を抱えた登場人物の人生が、このホテルで交錯する。当時としては斬新で、巧みな構成により、第5回アカデミー賞作品賞を獲得し、この構成方法は「グランド・ホテル形式」といわれるようになったそうです。
2006年に公開された三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』もこの手法をとったもので、舞台のホテルのスイートルームには、『グランド・ホテル』の登場人物の名前が付けられていました。

『グランド・ホテル』の主な登場人物は5人です。
かつての人気がなくなったことを嘆き、自殺に心が揺れるダンサー・グルシンスカヤ
(グレタ・ガルボ)。
賭博で多額の借金を抱え、ホテル専門の泥棒に身をやつした男爵フォン・ガイゲルン
(ジョン・バリモア)。
会社の危機を乗り切るために、強引に他企業との合併交渉に当たる不遜な社長プライジング
(ウォーレス・ビアリー)。
プライジングの会社の帳簿係で、医者から余命が短いことを告げられて自暴自棄になり、全財産をつかってグランド・ホテルの最も高い部屋に泊まり贅の限りを尽くそうとするクリングライン(ライオネル・バリモア、ジョン・バリモアの兄)。
プライジングに雇われた、美しい速記者フレムヒュン(ジョーン・クロフォード)。

この5人がホテルで出会い、3日足らずの間にそれぞれの人生がガラリと変わってしまいます。まず、イケメン男爵のモテっぷりがすばらしいので、時間を追って紹介すると……。

■男爵のモテ行動1
部屋の外で雇い主のプライジングを待つ速記者フレムヒュンに声をかけ、巧みなトークで翌日夕方5時にダンスの約束を取り付ける。

■男爵のモテ行動2
同じ夜、グルシンスカヤの部屋に忍び込み、パールのネックレスを盗もうとするが、そこに傷心のグルシンスカヤが戻ってきて、独り言で自殺をほのめかす。それを聞いた男爵は彼女の前に姿を現し、「あなたの息づかいを感じるために」あなたの部屋に隠れていたなどとくどき、初対面にもかかわらず、ふたりはそのまま一夜をともに過ごして愛を語り合う。

■男爵のモテ行動3
翌日の夕方5時。男爵は約束通り、フレムヒュンとダンスを1曲楽しんだ後、クリングラインと一緒に踊ってくれと頼む。「あなた昨夜と別人のようよ」というフレムヒュンに対し、男爵は「昨日恋に落ちた。真実のだ」と語る。そんな男爵を、フレムヒュンは愛してしまう……。

正直、かなり無理のある展開だと思いましたが、わずか2日足らずの間に、ふたりの女性に愛されてしまう男爵。見事です。

フリップ、注文を受けたこと、わずか数回

さて、本題のお酒の話。
5時のティータイム。ダンスホールのバーカウンターについたクリングラインは、たぶんこのような社交場は初体験なのでしょう、持ち前の正直さでバーテンダーに「冷たくて甘い物を」と注文します。それが冒頭の英語のセリフです。バーテンダーは「ルイジアナ・フリップです」と、冷やしたグラスを出し、そこにシェイクしたお酒を注ぎ入れます。

さて、このルイジアナ・フリップとはどんなお酒なのでしょうか?
フリップは最初に書きましたとおり、カクテルのひとつのスタイルなのですが、ルイジアナ・フリップというカクテルはどれだけカクテルブックを調べても出てきません。おそらく架空のカクテル名なのだろうと思われます。
そして、残念ながら、フリップがいつごろ、どこで誕生したカクテルなのかも突き止められませんでした。

現在、フリップにはいろいろな種類がありますが、その処方には、ベースになるお酒に卵黄と砂糖を加えてシェイクするという決まりがあります。好みでナツメグを振りかけることもあります。
ちなみに、私はバーテンダーとして約20年、独立して10年以上経ちますが、フリップというカクテル、今までほとんど注文を受けたことがありません。映画の当時はわかりませんが、今の日本においてはかなりマイナーなカクテルだと思います。
※担当・細川より:このコラム作成にあたり、ほかの某有名バーでも注文してみましたが、そのバーテンダーの方は「ご注文を受けて作るのはバーテンダー人生で2回目です」とおっしゃってました。

今回、このコラムを書くにあたり、いろいろなフリップを何回も作りました。そしてわかったことは、このカクテル、知名度の低さに反して、結構うまい!ということ。
それでは、代表的なフリップ「ブランデー・フリップ」で作り方を見ていきましょう。
  • BAR CINEMA~この映画に乾杯!(第10回)『グランド・ホテル』 ――「冷たくて甘い物」=玉子酒は男を強くする!?

    卵黄1個をミキサーにかける。箸などで溶いてもかまいませんが、ミキサーにかけたほうが滑らかな仕上がりになります。

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    ベースのブランデー45mlをシェイカーに入れます。

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    溶いた卵を入れます。

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    砂糖をティースプーンに1杯入れます。シュガーシロップでもかまいません。

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    よくシェイクしてグラスに注ぎます。注ぐときに茶こしでこすと、いっそう滑らかになります。

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    ボストン・フリップ。レシピはライウイスキー30ml、マデイラ30ml、卵黄1個分、砂糖ティースプーン1杯。シェイクしてグラスに注ぐ。

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    ポート・フリップ。レシピはポートワイン45ml、卵黄1個分、砂糖ティースプーン1杯。シェイクしてグラスに注ぐ。

酒を彩る器

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